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活動報告

2018-08-26 カテゴリー:

海外の動物愛護団体を訪問The Humane Society of the United States

生後7か月まで種付用として飼育されていた「九」との出会いによって、動物の殺処分や虐待について問題意識を持ち始めた私ですが、これらの課題を解決するための方法を多くの方から教えていただいているところです。

近年、日本においても、動物の権利(アニマルライツ)に関する関心が高まっていますが、ドイツのティアハイム(民間の動物シェルター)やアメリカのアニマルレスキューの事例など海外の先行事例を学びたいと考え、まずはアメリカに行ってきました。

アメリカでは、全米人道協会(Humane Society of the United States: HSUS)と米国動物虐待防止協会(The American Society for the Prevention of Cruelty to Animals: ASPCA)が2大動物保護団体であるといわれ、それぞれ動物保護のチームを有しています。

今回はワシントンに本部を置く動物福祉団体「HSUS」を訪問して参りました。

The Humane Society of the United States
1255 23rd Street, NW, Suite 450, Washington, DC 20037
http://www.humanesociety.org/

当日はHumane Society International「HSI」のシニア・ヴァイスプレジデントのAlexandra Freidbergさん、HSUS の動物保護部門の責任者Leana Stormont さんなど電話カンファレンスを含め5名の方々がご対応くださいました。

当日はHSUSが持っている様々な問題意識とその解決に向けた取り組みについてご説明をいただきました。


① 殺処分等を減少させる施策

HSUSが、強い問題意識を持っていることの1つは、ペットショップなど市場で売れ残った動物たちの殺処分についてでした。HSUS は、ペットとして飼育されるすべての動物に産まれた時点でマイクロチップを装着し、確実な個体認識をおこない、国がペット業者のトレーサビリティーを明確にすることの意義が大きいと考えています。

流通以前の段階からマイクロチップを装着することにより、繁殖業者、ペットオークション、生体販売業者の履歴データを蓄積することが可能となり、ずさんな繁殖などによる問題が発生した際などでも追跡調査が可能となりますし、遺伝性のリスクを知りながら繁殖させる業者の規制にもつながるからです。

アメリカでは、マイクロチップの装着を義務付けている地域もありますが、各自治体での判断となっており、全土で統一されているわけではありません。

HSUSでは、全米でのマイクロチップ装着を義務付けるため、連邦政府に対して働きかけを行っていますが、抵抗勢力も大きく、なかなか議会の賛同を得るまでには至っていないということです。


② 動物虐待を減少させる施策

HSUSは、動物虐待についても大きな問題意識をもっています。米国では、動物を虐殺する青少年の事件が相次ぎ、世間を騒がしていますが、動物虐待の背景には何があり、どのような危険を孕むのかを教えていただきました。

1970 年代からFBIが連続殺人などの凶悪犯罪者の20年来の過去を調査したところ、凶悪犯罪者が犯罪を犯し始める初期段階で、動物虐待を繰り返していたことがわかりました。他の生物へのコントロールする力を自分が持ち、それを発揮できるという歪んだ支配欲が、動物虐待や家庭内暴力などの事件につながっているようです。

多くの事例から考え、若い青少年が動物への虐待をおこなったり、動物の命を絶つという行為をすることは、犯罪への境界線を一歩踏み越えてしまったシグナルてあり、その青少年が社会に対して自分の権力を誇示しようとする「精神的な歪み」を示していると考えられています。

マサチューセッツ州の動物虐待防止協会(MSPCA)が過去20年間、約200件の記録を洗い直し、意図的に動物を殴り、傷つけ、命を絶つ等の犯罪の加害者は27%は未成年で、56%は30歳未満であり、その97%は男性であることがわかりました。また、暴力的犯罪(家庭内暴力を含め検挙される率)は動物虐待をしない群の4倍。財産を盗む、器物損壊などは対照群の約4倍。薬物中毒及びそれに手を染める等は対照群の3倍。犯罪的傾向、反社会的傾向は対照群の3倍となっています。

そして、HSUSの調査では意図的に動物を傷つける者は3分の1は、13~18歳の年齢層であり、これらの者の94%は男子、これらの4%は12歳以下の子供によりおこなわれたものです。つまり、動物虐待は中・高生の男子に多いという傾向が明らかになっています。

一方、児童虐待があった家庭では、飼われていたペットの60%で動物虐待が行われていました。その内37%は子供自体が虐待に関わっていたのです。子供達は、自分が親から虐待されたことで、今度は自分より弱いペットを対象に虐待をするという虐待の連鎖が発生しているのです。

いままでの動物愛護教育は、子供たち全体に対して適切な動物の飼い方や責任などを教えることが中心となっていたが、上記のような状況を踏まえて、近年では動物愛護教育の方法も見直されてきています。

地域のなかに問題を抱えた青少年を見つけた場合、なるべく早い時期に適切で速やかな対応が求められますが、そのためには教育機関、児童虐待などの児童福祉センターだけでなく、HSUSのような動物愛護団体が連携して対応する-4-事が肝要であると考えられています。

これらの点から考えて、動物愛護教育は、いのちを大切にするという道徳的な問題だけではなく、虐待や暴力犯罪への最初の芽を摘む手段としても社会的意味があると考えられます。

HSUSでは、動物虐待に対する罰則の強化のための法整備を連邦政府に訴えているそうですが、その実現は容易ではないそうです。

年齢 故意の動物虐待
10歳未満 5%
11歳~19歳 22%
成人 73%
  暴力
犯罪者数
窃盗・器物損壊
犯罪者数
薬物依存者数 反社会的行動
動物虐待あり 38%
4倍
44%
4倍
37%
3倍
37%
3倍
動物虐待なし 7% 11% 11% 12%

※マサチューセッツ州 動物虐待防止協会の調査


③ 今後について

HSUSへの訪問によって、いろいろな気づき得ることができ、学ぶことも
多くありました。

私が動物愛護の推進を訴えるために「教育問題」として全国キャラバンをしていることなどを説明すると、彼らは椅子から立ち上がって自分たちの想いを熱く語り始めました。

法整備の必要性は勿論必要ですが、それだけでなく動物愛護の教育を通して、青少年が「いのちをまもる」という意識を啓発していくことが大切であるということをあらためて感じました。

また、HSUSは連邦議会の議員に対して積極的にロビー活動をしていますが、議員が自らHSUSの事務局を訪れ、彼らの活動についてヒアリングをすることは極めて稀なことのようです。外国の国会議員がHSUS の事務局を訪問するのは、私が最初だそうです。

HSUSのフェイスブックのフォロワーが2.6億人であること、数億ドルに上る年間予算の大半が個人からの寄付で成り立っていることを考えると、HSUSの活動が多くの人から支持されているかを窺い知ることができますし、米国が動物愛護活動の先進国であることは間違いないといえるでしょう。

しかしながら、課題解決に向けた行動については、日本と同様の障壁があることも確かなようです。今後、相互に情報交換を行いながら、より良い道を模索するよう協働していこうとの合意に達することができました。

お忙しいなか、長時間にわたり、熱意をもってご対応いただいたHSUSのみなさま方に心から感謝しております。

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