大島九州男は参議院本会議にて、漁業法の一部を改正する等の法律案について、反対の立場から討論を行いました。
まず冒頭にて、東日本大震災当時に故松本龍復興大臣が宮城県知事に対し暴言を吐いたとされた出来事について触れ、この出来事のきっかけは今回の漁業法の見直しにつながる「水産業復興特区」構想を宮城県知事が強硬に推し進めようとしていたことにあると指摘いたしました。
松本先生は村井知事に対して、県が漁業関係者とのコンセンサスを得る努力をせず震災の混乱に乗じて漁業組合に変わる漁業権の進出を画策したことへの忠告を行ったのです。
このことを皆さんにお伝えした上で、大島九州男は漁業法改正案に反対する理由として以下の5点を挙げました。
(1)審議時間の圧倒的不足
70年ぶりの大改革を行う改正案にもかかわらず、委員会では十分に審議がなされず与党による強引な委員会運営がなされました。会期の短い臨時国会で急いで成立させるのではなく、常会でじっくりと慎重に審議すべきだったと考えます。
(2)漁業者への説明の不足
改正案に対する漁業者への説明が十分でなく、漁業者の理解が全く進んでいません。そもそもこの改正案は規制改革推進会議の提言によって進められたもので、漁業者の目線に立ったものではありません。
(3)漁業権の優先順位の廃止
改正案では、漁場を適切かつ有効に活用していれば引き続き漁業権が保証されるとしていますが、何をもって適切かつ有効とするかは改正案のどこにも書いてありません。委員会の場で何度も質問しましたが、明確、具体的、納得できる答弁は得られませんでした。
国は判断の基準が大きく異なることがないよう技術的助言を定めるとしていますが、法的拘束力はなく、恣意的な運用により浜で生活してきた漁業者が漁業権を失うという事態も起こり得ます。また、漁業者の行っていた漁業を大規模な企業が行うようになることの影響は地域全体に及びます。外国企業参入の可能性もあり、密輸・不法操業等への抑止力として漁業者が果たしてきた水域監視機能が弱まることも懸念されます。
(4)TAC管理の有効性への疑問
水産資源は漁獲による影響だけでなく環境変化等の影響も受けます。TAC管理は再生産関係に依拠する最大持続生産量理論を前提としており、TAC管理が本当に有効かどうか疑問が残ります。
またIQの実施についても、監視コストが莫大になり取り締まりが十分に行われなければ資源管理を有効に行うことができなくなってしまうという懸念があります。
さらに、TAC管理が成功するかどうかも分からないうちから漁船のトン数規制を撤廃することは、いたずらに漁獲量を増加させ資源を減少させることになってしまうのではと危惧いたします。
(5)海区漁業調整委員会の公選制の廃止
これまで選挙によって民主的に選ばれていた漁民委員について、改正案では知事が議会の同意を得て任命する仕組みになります。政府は、選挙を行うと漁業者の多い地区や漁業種類から委員が選ばれやすくなってしまうことや投票率の低さを廃止の理由として挙げていますが、漁業者の声が届きにくくなってしまうことから民主的な選挙の仕組みはなくすべきではないと考えます。
この法案は、企業の参入を促進し、漁業者の生活を脅かすものです。また、改正内容が漁業者には十分に説明されず、国会審議も不十分と言わざるを得ません。以上のことから、私は本法案には断固反対であることを申し上げました。
これからも「いのちを守る」活動を続けてまいります。